仄暗い水の底から(鈴木光司)
映画有名すぎて書籍の形で見たことない人多数派説。
映画では黒木瞳扮する主人公の「私は何がどうあれエレベーターを使うんだ」という鋼の意思が印象的だった。
プロローグとエピローグを除いて7つの物語が収録されている短編集。言うほどホラーとしては怖くはない。
基本カッチリした文体をたまに崩してくる(〜している、〜していた、等の「い」をなぜか抜く)ので「んっ?」てなる。
私は間抜けなので4つ目くらいまで長編だと信じており、映画原作の母子が再登場するのを心待ちにしていた。
Googleマップと並べて読むと、登場人物がだいたいどのへんに立ってるのかわかってちょっと楽しい。
別途有名な映画の「震える舌」、あれもこのへんの話だったね(※原作未読)
水って、閉じ込めてる間はかわいいものだけど、コントロールがほぼ利かなくて怖いと思う。
その証拠に、少しだけの水でもこぼしたら手に負えない。乾かないし、びちゃっとして不快。
ちょっと多めに集合されたらもうアウト。甘んじて身をゆだねるしかなくなってしまうしゲームオーバーだし。
しかも生死の概念がないから、だいたいのものは巻き取ってしまう。ウイルスも細菌も、毒も薬も。
かといって水がなければ地上の生き物オールアウトでみんな死んじまうしな。
でかくて強くて中立している水。
その最大の集合体である海、それを埋め立てた土地。誰しもうっすら怖くて当然じゃないかしらと私は思う。
海に囲まれた地震大国の日本人なら特別、そうではないかしら。
リング的な「おばけこわい!」を求めるならがっかりしちゃうかもだけど、タイトル通りの「仄暗い水の底」を満喫できる一冊でありました。との事でした。