君の膵臓をたべたい(住野よる)
「小説家になろう」作家の出版1作目だそうです。
私は、なろう系だからとラノベラノベ言うのは違うと思うし、そもそも「ライトノベル」が貶し言葉になるのは違うと思う。
ただこれは悪い意味でラノベ。
誰だって必ず死ぬ。余命宣告を受けた人も受けない人も、次の1秒が必ずしも訪れるわけじゃない。だからこの「今」を精いっぱい大切に生きよう。
…っていう話だと思うし、それはラノベでも書けるテーマだと思うんだけどね。
やれやれ系無名イケメン主人公と死に至る病を抱えた天真爛漫美少女ヒロインの泣けるムズキュン☆青春ラブストーリー(全体的にどっかで見た)!
…って言い換えてしまっても違和感がない。
そこがほんと良くないと思う。
主人公の男子高校生・やれやれ君は、ひょんなことから(って言いたい)ヒロイン・さくらの「共病文庫」なる闘病日記を見てしまう。
そこから始まるストーリー、っていうかストーリー自体は結構どうでもいい。
さくらの病気もどうでもいい。もはや何の病気かわからんし。なんか闇夜に光り輝いたりするよりマシだ。
つまりは生きること、命の価値を懇々と説いている。もうそれだけ。
スー…と読めてしまったところ唯一鼻についたのが、さくらの親友・恭子。
またこいつはやれ君に対してやたらと「殺す」とか言うのね。
(さくらを傷つけたら/おかしな真似したら)殺す、と。
やってみろよって話よ。
何らかの漫画に影響を受けたちょっと痛い子なのかもしれないね。
でもこんな、全編にわたって命を、生と死を説いている中でこの「殺す」は受け付けられない。
「許さない」とかでいいでしょう。
また悪いことに、ヒロインであるさくらまで「殺されればいい」と軽口を叩く。
これのせいで、「なんか軽いのは1作目だからで、作者は伝えたいテーマをしっかり持っているんだ」ってのが自分の勘違いに思えてくる。
「ただ薄命美少女とのムズキュン☆青春書きたいだけなんだな」と。
そういうふうに伝わった結果、イケメン映画の原作になっちゃったんじゃないの、と意地悪を言ってこの感想文を終わります。