単身赴任

ブログなるものを始めてみんとす。

怖い話を集めたら(深志美由紀)

惜しい…

 

売れない恋愛作家いつきちゃん、やり手の編集者とホラーアプリ作ろうとしたら怪異ヤバい感じになった件。

もうほんとそんな感じ。

 

やりたいことはわかるし読んでて面白いと思う、字数が少ないのもイイネ!でも、なんか…ねえ…初めて書いた小説なのかな?

と思ったけど一応賞持ちだった。団鬼六賞だって。

そっちは読んでないけど、もしかしてやりたくない仕事だったのかな?随分と雑に思えた。

それにしちゃ変なとこ気合い入っててよくわかんない…主人公の名前に「いつき」と自分の昔の名前つけちゃってね(著者デビュー時の名義は深志いつき)

妙にダサいタイトルからしてお察しなのか。まあ、タイトルは編集が強引にダサくしちゃうこともあるらしいしね。わからないですね。

 

主人公の斎藤いつきと中盤出てくる成海琴子が情報を後出しするので、想定してない展開が出てきてビックリする。うまくやればどんでん返しと言われる手法だけど、これはただの後出し。

友人の凪、霊能者の瑠衣の名前、容姿、「カフェインレスコーヒー」飲んでる等の無意味に気合い入った描写がなんか恥ずかしい。そこじゃないし、奴らだけアニメか漫画出身だな?

途中からいきなりわかりやすいボスキャラ出てきてびびった。登場人物ではない。まさに「ボスキャラ」という名称が相応しい。小物だけど。

オチが打ち切り漫画みたい。あわよくば続編書きたいのかな?シリーズにしたいのかな?アニメ化狙ってる?

 

一言で言うなら中途半端。でございましたな。今後に期待です。

にぎにぎしい女たち(岩瀬孝)

短大の一般向け講演の書き起こしだそうです。

 

著者の個性が妙に強く、予備校の授業かい?と思っていたけど似たようなものだった。

想定読者がなぜか高齢女性ぽいのも何でかなと思ったら、受講者に高齢寄り女性が多いんだって。

あとがきで軽く言い訳してるのが可愛らしい。

 

中世〜近世のフランスの…女性史…?

自分で何読んでるかわかんないって頭の出来が相当だけども、多分そういう…そういう内容…

フランスの大まかな歴史や哲学史を教えていただいた上で、ジャンヌ・ダルクマリー・アントワネットが実際にはどんな感じの人だったんかを教えていただく?感じ?

 

こういうレベルなんで自分がいかにあほちゃんであるかを実感しながら読んでいたけど、とりあえずキャラ立ちすぎて「ジャンヌ(マリー)ちゃんとモブ多数」状態だった「ぼくのかんがえたむかしのふらんす」からは片手出てきた気持ちれす。早く出ていきたいね…みっともないし…

 

著者がフランス演劇の研究者だそうで、そのせいか?フランス人の性質が軽くだけどわかりやすく書かれていて、そのへんが私には興味深かったでした。

キャラクターの性質に深めに突っ込んでいくのって演劇ならではだと思ったりなどす…

危ない食卓(横山茂雄 編)

「十九世紀イギリス文学にみる食と毒」

とのことです。

 

文学研究者のみなさんが対談したり、ろ…論文…?を書いたり、十九世紀当時の講演を邦訳してくれたりとかしている、さ…作品…?

産業革命あたりの歴史含めてかなり軽めに砕いた更に表層をサラーと解説していただいた気持ち。

ある程度知識のある人にとっては、今更そっから説明されても…くらいの物足りない内容だと思うけど、私みたいな「十九世紀イギリスは、えーっと戦争してるんじゃない!?」みたいなセンター試験世界史30点未満(本当)のアホちゃんには親切な内容でした。

 

アホちゃんなので「不思議の国のアリスのお菓子みたいなああいうの〜?」と口開けて鼻水垂らしながら手に取ったんだけど、実際は十九世紀当時の食品偽装及び添加物問題、飲酒問題、拒食症、ベジタリアン、ついでに父権制フェミニズム等の社会問題から思想に到るまで広く撫でていく内容でした。

それらは全部バラバラの話だと思っていたけど、人間の考えることで完全に独立した問題ってそんな無いのかもしれないね。

こういう入門書からそれぞれ選択して専門性を獲得していくのかな。

 

私は自分が女であるのも手伝ってか、フェミニズム問題に気をひかれましたかね。

適当にまとめてフェミニズムと言ったけど、本書に習って遡るならまずヨーロッパ史を勉強しなばならんなと思うので、そこにたどり着くにはしばらく時間がかかるだろうな。

本書範囲に限るなら、産業革命中流層が発生⇨中流層の女性は働かなくていい(労働者層とは違う)⇨守られるべき弱さが女性としてのステータスとなる、みたいな流れがざっくりあるようだ。

その中に、拒食症や飲酒、ベジタリアン思想も含まれていたりして。

よくTwitterとかで見るフェミニストさんが「フェミニズムを勉強せよ、この本ないし作品を読め」と言うけど、そんな軽いもんではない…

土台のない人間が既に思想の固まったフェミニストの著書、著作をなんぼ読んでもそれは著者のフォロワーとなるだけ、つうかオルグされてるだけで、それは勉強とは言わんくない?みたいな…

フェミニズムに限らず思想的な学問って土台になる歴史の基礎知識が絶対に必要だから、なんにせよまずは歴史なんだねえ。

私は建築的な意味で教会というものが大好きなんだけど(推しはロマネスク。可愛い!)、あれも土台作りが重要、でも楽しいのはやっぱ躯体や装飾…

でも土台がないとあの可愛いロマネスク様式教会も潰れるからね。

歴史ちゃんと勉強しよって思いました!(バカの結論)

ランゴリアーズ(スティーブン・キング)

スーパー売れっ子は格が違うな…

 

雲上の密室、飛行機内で人間が3桁人消失しました。なーんでだ!

そんな表題作と、

妻の不倫&離婚であっぷあっぷの中年作家を盗作だよなと詰めまくる初老男性。ほーんとか?

そんな「秘密の窓、秘密の庭」を収録した物理的に重たい本を読みました。

手首つらい気持ちになった。

 

ランゴリアーズは昔テレビでみたけど記憶は曖昧。シークレットなんとやらは未見。そんな状態。

スティーブン・キングって映画は有名だしよく観るけど、原作って意外と読まないよね。なんか、全て知ってる気持ちになっちゃって手が出ない。

日常描写が長くて読みにくい、みたいな書評を見ちゃうと尚更…でも、実際読んだら全然そんなことないし(長い、のハードル上げてたのかも)むしろ面白かった。

秘密の〜は普通にオチ読めるんだけど、なんでか自分で読んだオチに納得がいかず、放り出すことなく読了できました。

私が外国人に縁のない日本人だからかな、著者の腕なのかな、なんかこう、最後まで読まないとわからなかった。

 

両作品とも、翻訳のせい?(小尾美佐)なのか登場人物がみんなちょっと可愛らしいのです。

でも、みんなして私にはわからない残酷さというか酷薄さというか、そういうものを持っていて、こわい。

わかりやすいのは、ランゴリアーズのダイナ(盲目)とローレル(ダイナの臨時お守り)。

特にダイナは神秘的聖幼女みたいに読めるので、奴の行動は特にギョッとする。将軍かなんかかよこいつ。

ローレルの思考も、まああるだろ。不自然ではない。普通。と思いはするけど怖いわ。

彼女らが代表であるだけで、他の人らも、なんだろう、遠い人、外国人…という気持ち。外国人なんだけどさ。みんなドライよね。

 

全然関係ないけど、ちょっと昔のことを「千年前」とかそういう言い方するのってこの時からあったんだ(むしろ、ここから始まった?の?)と思って微妙に感動してしまった。

 

スティーブン・キングレベルになるとネタバレなんかもうどうでもいいとは思うけど、読んだ方が面白いからこの程度で。

文字数的な意味で確かに長いけど、とりあえずランゴリアーズだけでも読んだら面白いと思います!ビーチボール無双のために!(あともしかしたらトースター無双のために)

 

生きてるだけで、愛。(本谷有希子)※映画版こみ

短編を109分の映画にするなんて、無茶だよ。

 

躁鬱メンヘラ寧子ちゃんが、日常でひたすらもがき続ける大変閉塞的な一作。

映画版がどうしょもなかったせいか、原作は表紙のハートがダサいくらいでそこまで悪くなく思えた。

 

原作の登場人物は寧子ひとりで、その他のみなさんはNPCと言って差し支えがない。

それは寧子が他人にうまく触れないせいであり、恋人の津奈木すらも村人Aみたいになっている。

一生懸命津奈木に触ろうとして、できなくて、でも諦めきれずに手を出して、生きてることしかできない寧子の生自体が愛になる。

最後の選択が「携帯を閉じる」=「NPCのお役御免」、要は別れなのだから物悲しいですね…

 

対して映画版は津奈木フィーチャーしすぎ。

結局津奈木も寧子と同じフィールドに降りてきちゃうし。

キャストの菅田将暉は確かに格好の良い素敵な俳優なんだけど、菅田将暉のカッコいい姿じゃなくて、無様に足掻く寧子の姿を描いてくだせえよ。

あと寧子の趣里ちゃんは何やっても趣里ちゃんだからもっと頑張ってほしい。脱げるだけの女優になんないでくださいよ!

 

あと映画版でよろしくないのは、寧子が停電で発狂するところ。原作を読んでないのか読んでもわかんなかったのか、究極趣里ちゃんのせいなのか…

寧子は暗闇が怖いわけじゃない。限界まで膨らんだ自分への失望が停電をトリガーとして破裂してるだけ。

あれじゃ寧子の属性盛ってるだけじゃん。躁鬱、コミュ障、メンヘラ、暗所恐怖症←new

寧子押さえつける菅田将暉はカッコ良かったよ。そこじゃねえけどな。

 

原作は、一読の価値はあると思います(同時収録「あの明け方の」はスルーでOK)

映画は、菅田将暉が大好きなら絶対観るべきだと思います。

私からは以上です。

カクレカラクリ(森博嗣)

なんか、真顔になる。

 

私は前回の「イデアの影」まで森博嗣に触れずにおり、またなぜか綾辻行人(未読)と混同し、勝手に「本格ハードボイルド推理小説家 森博嗣」を爆誕させていました。

違った。

ヤングアダルトジュブナイルな作家さんだったんですね。失礼した。

 

本作はコカコーラとタイアップしてるのもあり、まさに少年少女小説

少年、つっても大学生だけど、そいつらが可愛い女の子追っかけて出向いた片田舎で宝探しをするお話。

不思議ちゃん美少女ヒロインあり、天真爛漫メカオタ妹サブヒロインあり、お調子親友男子あり、謎解きあり、秘密ありのノベルゲームアプリのようだった。

 

謎解きはかなり軽く、脱出ゲームが好きな人ならチラ見で解読可能。

よう100年以上謎保ったな、と感心するレベル。

タイトルにもなっている「カクレカラクリ」は「そんでなんなの」と思ってしまった。

 

秘密は年代的な意味で古すぎ、もはや意味をなさないが登場人物たちは子供なので?ショック受けたり泣いてみたりしていた。

リアル少年少女なら共感するのかな?

 

主人公の親友男子はヒロインに片思い?してるんだけど、前振りもなく、ヒロイン自体が「なんか片思いされてるくらいだから美少女なん?」程度の謎感持ったままラストまで走るから理解も共感もできない。

主人公は結構真剣に謎解き始めるものの、気まぐれ君なのかあっさり諦めて家帰ろうとしたりもするので「んっ!」てなる。

変拍子の音楽聴いてるときみたいに「んっ!」てなる。

 

終始ゆるめのテンションで進む、なんというか気楽に読めて、疲れてるときの暇潰しにはいいかなっと、そんな感じです。

イデアの影(森博嗣)

狂女の半生。

 

好き嫌いが分かれそう。

名無しの女性を主人公とした、なんというか音の無い一作。

レコードをかけたり、舞踏会に出たり、案外音楽は流れているのに無音という印象。

ハイスピードで人間がザクザクと死に、そのたび均衡を崩す主人公。

結局、生き物を辞めてしまった。

これ嫌いな人は、穴(小山田浩子)が好きかもわからん。

あっちの人が現実ベースの幻想なら、こっちの人は幻想ベースの現実だな。

 

ひとの認識をちょっとずつ引っ張って、気付けば位置をずらしてしまう作品というのがたまにある。

具体的には、よく夢野久作ドグラマグラに「読むと気が狂う」と煽りがついてるけど、そういうこと。

ドグラマグラは丁寧に丁寧にそれをやるけど、本作は大した文字数を費やさずにわりとあっさりやってのける。

多分、作品内で読み手にいちばん近い主人公が真っ先に引っ張られて、読み手を誘導するんだろうね。

ただ、答えの見えない場所へ置き去りにしてループ始めるドグラマグラより、穏やかな場所まで導いてくれる本作は別に気を狂わせたりしないと思う。安心して、どうぞ。

 

ひとつ言わせてもらうなら、あのプロローグはなんなの。

プロローグの数ページだけが小煩い。

全編通しておっとりゆったりおとぼけている主人公が、なんかそこだけ色があるというか輪郭があるというか、きつめの感情があるというか。

狂人ではない、明確に現実を生きている彼女であるのかな?

あっちとこっちを行き来するタイプだったんね。

 

中盤から主人公は、影と言葉を交わし始める。

それは人間=物体の影ではなく誰かの観念、理想の誰か、主人公が創り出したイデアの影。

なんか、それもいいのかもわからんね。