架空の犬と嘘をつく猫(寺地はるな)
私はつまらない人間なので、こういうの、ふーん、と思ってしまう。ふーん。
8歳の山吹少年が中年になるまで、という感じ?
山吹は姉と弟の三兄弟、真ん中長男。
しかし末っ子が幼くして事故死、それをきっかけに半崩壊した家庭を綱渡りで維持してきた。
バランスをとるため広げた両手にあたるものが、嘘。
彼の姓は「羽猫」なので、「嘘をつく猫」とは山吹のことなんだろうね。
山吹自身の心のバランスをとっていたのは、彼が心に思い描いた空想の犬。架空の犬。嘘の犬。
しかし嘘、嘘と大仰に語る割には、そうかあ?という感じの嘘も方便。
創作(物語)まで嘘に含めてしまうから収集がつかない。
肝心の山吹なんかどちらかというと誠実だったりする。嘘をつくこともあるっていう程度。
架空の犬なんて、そんなの嘘にカウントするか?
低空ながらも安定した山吹の世界に満を辞して登場しますは愛されヒロイン 頼(より)ちゃん。
この子は作中(現実だとしても恐らく)すっごく異質。
この作品の登場人物を含め、誰しも大なり小なり家庭のご事情を抱えてらっしゃるものだと思うがこの子にはそれがない。
お母さん留守だからごはんが食べれない…と大学生にもなってのたまう体たらく。
完璧な家庭で愛情たっぷりに育ったちょっぴりワガママで純粋で完の全な聖女ちゃん。
嘘=山吹(及びその他登場人物)との対比としての、真実であるのかな?
嘘の中の真実、異物である頼は、嘘のみなさんを困惑させたり、若干ウザがられたりもしつつ、なんかうまーいこと歯車を回していく。
この聖女を山吹の嘘が崩落させるのか?と思いきや基本的に普通の人な山吹は必要以上には嘘つかないので、そんな胸熱展開はなかったよ。
私が1番、どうかなあ、と思うのは、山吹がいつ、どうして頼を好きになったかと全く不明というところ。
いや不明でいいんだけど、頼とのエピソードが全然楽しそうじゃなく、むしろ居心地が悪いから、終盤語られる山吹から頼への思いが全部嘘に見えるんだよね。
でもそこが嘘だとちょっと意味わかんない話になる。サイコ山吹が爆誕してしまう。
山吹が唯一、感情を大きく波立たせる理由も、そこかあ…ていう…
突然ヒーローになっちゃう一瞬もわけわかんなかった。
物語の主題がぶれているように思える。
嘘と真実?家族とは?絆とは?愛?成長?何???
何かな???
思ったより酷評になって申し訳ない、でも真剣に読んだ上での感想だから勘弁してほしい。
そんな気持ち。