単身赴任

ブログなるものを始めてみんとす。

君の膵臓をたべたい(住野よる)

ラノベかな?と思ったらラノベだった。

 

小説家になろう」作家の出版1作目だそうです。

私は、なろう系だからとラノベラノベ言うのは違うと思うし、そもそも「ライトノベル」が貶し言葉になるのは違うと思う。

ただこれは悪い意味でラノベ

誰だって必ず死ぬ。余命宣告を受けた人も受けない人も、次の1秒が必ずしも訪れるわけじゃない。だからこの「今」を精いっぱい大切に生きよう。

…っていう話だと思うし、それはラノベでも書けるテーマだと思うんだけどね。

やれやれ系無名イケメン主人公と死に至る病を抱えた天真爛漫美少女ヒロインの泣けるムズキュン☆青春ラブストーリー(全体的にどっかで見た)!

…って言い換えてしまっても違和感がない。

そこがほんと良くないと思う。

 

主人公の男子高校生・やれやれ君は、ひょんなことから(って言いたい)ヒロイン・さくらの「共病文庫」なる闘病日記を見てしまう。

そこから始まるストーリー、っていうかストーリー自体は結構どうでもいい。

さくらの病気もどうでもいい。もはや何の病気かわからんし。なんか闇夜に光り輝いたりするよりマシだ。

つまりは生きること、命の価値を懇々と説いている。もうそれだけ。

スー…と読めてしまったところ唯一鼻についたのが、さくらの親友・恭子。

またこいつはやれ君に対してやたらと「殺す」とか言うのね。

(さくらを傷つけたら/おかしな真似したら)殺す、と。

やってみろよって話よ。

何らかの漫画に影響を受けたちょっと痛い子なのかもしれないね。

でもこんな、全編にわたって命を、生と死を説いている中でこの「殺す」は受け付けられない。

「許さない」とかでいいでしょう。

また悪いことに、ヒロインであるさくらまで「殺されればいい」と軽口を叩く。

これのせいで、「なんか軽いのは1作目だからで、作者は伝えたいテーマをしっかり持っているんだ」ってのが自分の勘違いに思えてくる。

「ただ薄命美少女とのムズキュン☆青春書きたいだけなんだな」と。

そういうふうに伝わった結果、イケメン映画の原作になっちゃったんじゃないの、と意地悪を言ってこの感想文を終わります。

穴(小山田浩子)

表紙のデザインが好きだな!

 

2014年?そのくらいに芥川賞を受賞してるそうだ。

鄙びた風景が目に浮かぶ。蝉の声、草の匂い、湿気の重さ。

そんな遠くの現実を快適なおうちにいながら体験させる、描き出した現実を少しだけ捻じ曲げる高い技術。

…で、(これはほんと認めるけど)頭も感性もイケてない私にとっては「いつまでも始まらないお話」。

純文学ってそういうとこあるよね…好きじゃない人にとっては永遠にAメロが続く(ように聞こえる)ミニマルテクノのようだよ。

 

※個人の感想です。

夫の転勤の都合で田舎に引っ越したタイミングで専業になった主婦がボケ老人にビビり倒し、慣れない環境と暇も手伝ってノイローゼを患う話。

※個人の感想です。

 

認知症の人間ていうのは、若い人とは違う世界を見て、生きているから、ある種「不気味の谷」状態なんですよね。

ついでに言うと「子供」というのも、あいつらは脳機能が発達過程にある関係でちょっと違う世界を見るので、大人から見ると「不気味の谷」状態になりやすい。

 

引っ越した田舎で主人公が出会うのは、認知症の老人、子供たち、所作言動の全てがガイキチじみた男性。

それらへの道を導く謎の獣。

これ、普通に元気なときだったら、めんどくせーなーの一言で終わっちゃうと思う。

全ての条件が悪い方向へ重なると人間はこうなる、という事例のように私は読んだ。

また作者が筆力おばけだもんで、これ真剣に感情移入して読んだら読者も気を病みそう。

現実的な思考や感情の動き、そこにストーリーなどないから、いつまでも何も始まらないように感じる。

私には合わなかったな…

 

同時収録の「いたちなく」「ゆきのやど」これは、流し読みしてしまった。

「いたちなく」でいたちを溺死させる(害獣だからね)話をするところが読めず、飛ばしてしまったからだ。

私は2匹のおフェレット様に日々全力でお仕え申し上げ奉っておりますため、主人と同族のおいたち様への狼藉はまったく耐え難い描写だったのであります。

 

ちなみに私、ミニマルテクノは大好きです。

都市伝説セピア(朱川 湊人)

タイトルがダサい。

 

映像化したやつがAmazonプライムで無料対象になっていた。

あまりにもダサいタイトルに引き気味だったので見てないんだけども、書籍という物体としてでてきたら手が出た。

そんなかんじ。

 

時代が時代なら、星新一筒井康隆みたいに世にも奇妙な物語の原作常連になっていただろうな、と思う。

…ということは感想が書けない。ネタバレになったらもう読む意味がないから。

唯一言えるとするなら一話が長い。ダラダラともう長すぎ。

半分くらいの文字数まで削ってくれたら個人的にはもう完璧。

 

とりあえずタイトルがダサい。

架空の犬と嘘をつく猫(寺地はるな)

私はつまらない人間なので、こういうの、ふーん、と思ってしまう。ふーん。

 

8歳の山吹少年が中年になるまで、という感じ?

山吹は姉と弟の三兄弟、真ん中長男。

しかし末っ子が幼くして事故死、それをきっかけに半崩壊した家庭を綱渡りで維持してきた。

バランスをとるため広げた両手にあたるものが、嘘。

彼の姓は「羽猫」なので、「嘘をつく猫」とは山吹のことなんだろうね。

山吹自身の心のバランスをとっていたのは、彼が心に思い描いた空想の犬。架空の犬。嘘の犬。

しかし嘘、嘘と大仰に語る割には、そうかあ?という感じの嘘も方便。

創作(物語)まで嘘に含めてしまうから収集がつかない。

肝心の山吹なんかどちらかというと誠実だったりする。嘘をつくこともあるっていう程度。

架空の犬なんて、そんなの嘘にカウントするか?

 

低空ながらも安定した山吹の世界に満を辞して登場しますは愛されヒロイン 頼(より)ちゃん。

この子は作中(現実だとしても恐らく)すっごく異質。

この作品の登場人物を含め、誰しも大なり小なり家庭のご事情を抱えてらっしゃるものだと思うがこの子にはそれがない。

お母さん留守だからごはんが食べれない…と大学生にもなってのたまう体たらく。

完璧な家庭で愛情たっぷりに育ったちょっぴりワガママで純粋で完の全な聖女ちゃん。

嘘=山吹(及びその他登場人物)との対比としての、真実であるのかな?

嘘の中の真実、異物である頼は、嘘のみなさんを困惑させたり、若干ウザがられたりもしつつ、なんかうまーいこと歯車を回していく。

この聖女を山吹の嘘が崩落させるのか?と思いきや基本的に普通の人な山吹は必要以上には嘘つかないので、そんな胸熱展開はなかったよ。

 

私が1番、どうかなあ、と思うのは、山吹がいつ、どうして頼を好きになったかと全く不明というところ。

いや不明でいいんだけど、頼とのエピソードが全然楽しそうじゃなく、むしろ居心地が悪いから、終盤語られる山吹から頼への思いが全部嘘に見えるんだよね。

でもそこが嘘だとちょっと意味わかんない話になる。サイコ山吹が爆誕してしまう。

山吹が唯一、感情を大きく波立たせる理由も、そこかあ…ていう…

突然ヒーローになっちゃう一瞬もわけわかんなかった。

物語の主題がぶれているように思える。

嘘と真実?家族とは?絆とは?愛?成長?何???

何かな???

 

思ったより酷評になって申し訳ない、でも真剣に読んだ上での感想だから勘弁してほしい。

そんな気持ち。